小太刀を使う女
(C)KADOKAWA 1961
臼杵藩江戸屋敷の侍女池田律は、江戸詰の若侍片切直之助と夫婦約束をした。直之助は遠洋航海の船乗りにあこがれ脱藩した。律は彼の帰りを待っているうちに三十才になった。彼女は十年ぶりに臼杵に戻った。幼なかった町娘お国は成人し、生家の池田家では弟の健一郎が当主になり、商人になっていた。彼の新妻おたかも商家の出で、家名を誇る律にはなにもかも不満だった。折から起った西南の役の余波はこの城下町にもおよび、薩軍は臼杵目指して押寄せた。旧藩の士族五百名は政府軍の来るまで、町を死守することになった。