ともしび
図書館に勤める八島裕子は一見おとなしそうで、ふだん笑顔を見せることもなく、プライベートを楽しむ親しい友人もいない内向的な女性だろうと誰もが思っていた。しかしそんな彼女は、密かにある常軌を逸した行動をして、そのスリルを楽しんでいた。それは図書館の近くのマンションに忍び込み、室内をイタズラして住人を怖がらせ、マンションから追い出してしまうというもの。彼女がそんな行動に走った理由は、そのマンションに住む青年、越野守に恋していたから。だが一歩が踏み出せない彼女は、必死な想いがこんな歪んだ形を取ってしまったのだった。