滝の白糸
(C)KADOKAWA 1956
水芸人滝の白糸一座に合流を申し入れて一蹴された南京出刃打ちの寅五郎は、一足早く興行地の金沢に乗り込み白糸の邪魔をしようと考えた。寅五郎一座は矢部川を渡り、対岸の馬車会社で馬車を借り切ろうとしたが馭者の村越欣弥に手ひどくはねつけられ、止むなく人力車で出発した。だが白糸達の馬車が人力車を追い抜こうとしたとき、寅五郎の妨害で馬車は立往生。怒った欣弥は気をもむ白糸を馬に乗せ、金沢まで送る。金沢で白糸一行は寅五郎一座を尻目に初日から大入り。だが放心したような白糸の態度を後見のお安は心配した。ある夜、白糸は凉みがてらに卯辰橋に赴き、そこで岸辺に眠る欣弥の姿を見た。