パラノイアック
高村美紀は恋愛小説家であるが、最近は鬱病を患い、小説も書けない状況が続いている。同居している母親・美奈子もそんな美紀のことを心配している。ある日、担当編集者の早川が気分転換も兼ねて、恋愛小説以外のものを書いてみては、と提案してきた。美紀にはかねてより書きたい題材が一つだけあったのだった。
叔母の佐伯妙子は、十年近く前、息子を死産したのをきっかけに精神を病み、その後、失踪、約一年後、ある廃墟で餓死しているところを発見された。後に知ったところによると、叔母はしばらく、この廃墟で一人で暮らしていた形跡があったという。
執筆取材目的でその廃墟を訪れる美紀と編集者・早川。そこに三浦信二がやって来る。その廃墟は三浦の父親の持ち物であり、今回は代理人として、立会いに来たのだ。三浦によると、当初、全てのドアは解錠されていたらしいのだが、現在はいくつかの部屋に鍵がかかっているというのだが…。