僕はもうすぐ十一歳になる。
昆虫好きの少年・中村翔吾は母・香織と2 人で暮らしている。翔吾に昆虫採集を教えた父・徹はインドに単身赴任中である。
冬休みに入り、ひとりで黙々と昆虫採集を続ける翔吾はアメリカからの帰国子女・川上花音に弟子入りを懇願されて、昆虫採集や標本の作り方を教えるようになる。
年末、徹がインドから帰国してから、翔吾は大人たちの相矛盾する死生観に気付きはじめる。
徹はインドやブータンの価値観に影響され、昆虫の標本を作ることに疑問をおぼえていて、肉・魚を食べないようになっていた。
花音の母・陽子は昆虫標本を忌み嫌い、触りもしない。
翔吾の祖父・正は半年前に亡くなった妻・弥生の遺灰を人のように扱って話しかけている。
「死」とは何かと疑問に思いはじめた翔吾がとった大胆な行動とは・・・