黒四角
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北京郊外の芸術家村。売れない芸術家チャオピンは、ある画廊で「黒四角」という名の黒一色に塗りつぶされた不思議な絵を目にする。その絵には非常に高額な値がつけられ、そのうえ、「SOLD OUT」となっていることに呆れてしまう。しかし、何故かチャオピンはその絵に心を奪われてしまう。
翌日、チャオピンは空を飛んでいく黒い物体を発見し、それに誘われて、荒野にたどり着いた。厚みの無い黒い物体は荒れ地に降り、ただそこに立っている。すると突然、そこから裸体の男が現れる。その男は自分の名前さえ憶えておらず、どこから来て、どこへ向かうのかも分からないと言う。チャオピンは男に服を貸してやり、家に連れて帰る。そして、男を「黒四角」と名付け、お金を渡し、町へ出て仕事を探すように勧める。
チャオピンは、この男とどこかで出会ったことがあると既視感を覚え、遠い記憶の中に男の面影を探そうとするがうまくいかない。そしてそれは妹のリーホワも同じだった。不確かな過去の記憶と幻想の世界を行き来しながら、男とリーホワは次第に惹かれあっていく。「過去、現在、未来…。僕は君に会ったことがある…」と、男は言う。手を取り合い、北京の胡同を歩く二人。すると突然、二人の前に一人の日本兵が現れたのだった…。 そして物語は60年前、悲惨な戦争に従軍した日本兵と中国人兄妹の儚い愛と友情の記憶へと変転していく。