燈台
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昇が初めていさ子に会ったのは復員して我が家の玄関先に立った時だった。出迎えた彼女を見て昇は息を呑んだ。戦地帰りの彼に若い美しい日本の女は、余りにも印象が深かった。以来、彼は恋の虜となった。が、いさ子は父祐吉の後妻、昇は母の死後、父が再婚したのを知らなかった。昇は愛する人を母と呼ばねばならぬ運命の皮肉を憎んだ。それから二年目の春、昇は父と、妹の正子、それにいさ子と四人、大島に遊んだ。いさ子が夜、兄妹の部屋に遊びにきた。「眠れないから本を貸してほしい」といういさ子に、正子は昇の本を差出した。その本には、いさ子の名を連ねた落書が書きこまれてあった。