裸でだっこ
(C)KADOKAWA 1970
ユミは都会の片隅にあるバッカスという小さなスナックに働いていた。このユミにいつしか親衛隊ができた。武志、ケン、トオルの三人である。青春の本体は賭けだと、ユミの恋人武志は、ヨットの舵をとり見知らぬ国々を訪ね廻ることを夢みていた。ケンは町工場の工員だが、若者の共通語ニュー・ロックサウンズだけを流すゲリラ放送局を作ることを夢想していた。トオルは、カストロ、毛沢東に憧れる革命家を自称する大学生だった。彼らは自分たちの夢を具体化する可能性でもあるかのように貯金し始めた。