シネマ歌舞伎 高野聖
(c)松竹
修行僧の宗朝(そうちょう)は、飛騨から信濃へ抜ける山道で道に迷い、日も暮れた頃に孤家(ひとつや)にたどり着きます。この家に住むのは妖艶で気高い女と、女が養っている次郎、そして親仁の三人。一夜の宿を乞う宗朝を、女は一度拒みますが、思い直してその願いを聞き届けると、人が変わったように優しく接し始めます。女の案内に従い、宗朝が谷川で体をぬぐっていると、女が背中を流し始め、自らも着物を脱いで寄り添ってきます。宗朝は慌てて女の手を振り払い、川から上がります。女の色気に迷い煩悩の思いが沸き起こる一方、夜更けに鳥や獣たちが女のもとに集う只ならぬ様子に恐れ慄き、宗朝は一心に経文を唱えて心を静めます。