告別

小坂勇一は上田市に住む営業のサラリーマン。最近業績が上がらず、課長の高田からにらまれている。会社の幹部と姻戚関係にある高田は、事ある事に勇一に厳しく当たる。毎晩帰りが遅く、勇一は妻の和枝、娘の早苗との会話も途絶えがちだ。   そんなある日勇一は、故郷の村を目指して車を走らせた。しかし、よく知っているはずの山道でなぜか迷ってしまう。古びた公衆電話が目に留まり、勇一はその前に車を停める。古い電話帳に懐かしい高校時代の同級生、太の名前を見つけ、ダイヤルをした勇一だったが、太の声を聞いて驚いた。太が三十年前そのままの声だったからだ。電話は過去につながっていたのである。   翌日、勇一は太の母、しのから太が自殺していたことを聞き、さらに驚く。そして高校時代に悲しい別れをした同級生の幸のことを思い出す。 勇一が淡い思いを寄せていた幸と初めてデートをしたあの日、太はリラックスするようにアドバイスをしてくれたのだ。

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