大鹿村騒動記
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南アルプス山麓の谷間にある大鹿村。四方を山で囲まれたこの村では、三百年以上にもわたり村歌舞伎の伝統が守られてきた。シカ料理店を営む風祭善は、その大鹿歌舞伎に人生を捧げてきた花形役者である。しかし、実で威喝では、女房に逃げられ独り身となっている。その歌舞伎公演を5日後に控えた日、村役場の会議室は、リニア新幹線の誘致をめぐって揉めている。土木業の権三は、駅が出来ると若い人が戻ってくるという。農家の満は、農業を捨てる人が増えるなどの反対意見。総務課職員の美江は思案顔だ。善だけが、「早く稽古しようよ」と歌舞伎で頭がいっぱいなのだ。ようやく稽古が始まったところで、何と十八年前に失踪した妻の貴子と幼なじみの治が突然戻ってきた。貴子は認知症を煩い、自分が駆け落ちしたことさえ忘れてしまったという。いよいよ明日が本番なのに、最大風速三十メートルの暴風雨が村を襲い、女形の一平が土砂崩れに巻き込まれてしまう。幸い命は助かったものの、とても舞台には立てない状態だ。病院に駆けつけた善を前に、一平は思いがけない提案をするのだった。