脱獄者
(C)KADOKAWA 1967
大下一郎は敏腕の警部補として暴力団には容赦なかった。たまたま、麻薬取引きに絡んで対立する辻本産商と須藤興業の動きに目をつけていたのだが、そのいざこざで逮捕されたのは七年ぶりで会う弟の三郎だった。須藤興業の身内の三郎は兄を憎んでおり、麻薬取引きのことは何も白状しなかった。一郎は元署長の沢田の信頼が厚く、亡妻との間に出来た一人息子の浩と共に世話になっているのだが、現署長とは折合いが悪かった。三郎は間もなく釈放された。須藤興業と辻本産商の対立はいよいよ激しくなり、殺人事件をひき起すほどだった。