おと･な･り

カメラマンの聡は、風景写真を撮りたいという思いを持ちながらも、人気モデルであるシンゴの撮影に忙しい日々を送っている。七緒は、フラワーデザイナーを目指して花屋でアルバイトをしながら、フランスへの留学を目前に控えている。古いアパートの住人である二人は、ともに30歳で恋人なし。お隣同士ではあったが、顔を合わせたことは一度もない。だが、壁越しに聞こえてくる生活音は、いつの間にか、互いに安らぎをもたらす心地のいい響きになっていた。ある日、聡がアパートに戻ると、見知らぬ女が訪ねてくる。茜と名乗る女は、連絡が取れなくなったシンゴを探しにやってきた彼女で、妊娠三ヶ月だという。茜はシンゴが帰ってくるまで、聡の部屋に居候するというのだ。一方、七緒は自宅でフラワー・アレンジの練習をしていると、隣から女性と争うような音が聞こえ、翌朝、その彼女とバルコニーで挨拶を交わす。聡と七緒は、幾度かすれ違いながらもまだ顔を合わせたことがない。この二人が出会う日は、やってくるのだろうか。