題名のない子守唄

北イタリアのトリエステ。イレーナは、地味な服に身を包み、長距離バスから降り、高級レジデンスに辿りついた。メイドの仕事を探す彼女に、初老の管理人は、共有部分の掃除ならあると言う。仕事場となったレジデンスの向かい側のアパートに部屋を借りる。そしてイレーナは、ほの暗い窓辺に佇み、アダケル夫婦と、4歳になる娘のテアの家を見つめるのだった。レジデンスの階段掃除をしながら、彼女はアダケル家のメイド･ジーナと親しくなり、隙をみてジーナからアダケル家の鍵を盗み、合鍵を作った。その夜、一家の留守中に家に忍び込んだイレーナは、必死に何かを探す。メイド･ジーナが、レジデンスの螺旋階段に躓き、脳に深刻な障害を負う全身不随の重症を負った。しばらくして、イレーナはアダケル家のメイドにおさまるのだった。娘のテアは、淋しい自分とどこか似ているイレーナを、徐々に受け入れていく。