無法者の島
(C)KADOKAWA 1956
四国の南端。平家の落武者が住みついたという、入江に囲まれたこの集落は闘牛で名高い。今日も集落には牛市がたち、雑沓を極めていた。岬のゴンゾが出した黒牛“大天狗”は五万の高値を呼んだが、人並はずれた腕力と体躯の持主、博労の兵が半値以下で強引にひいて行ってしまった。だが乱暴者の兵も、闘牛の勧進元で旅館も兼ねている陣屋の女主人常代には、柄にもなく恋心を抱いていた。ある日、この村へ都会風俗の青年が降り立った。一計を案じた駐在の井原巡査は、とぼけたこの青年を行方不明で柔道六段の加川七郎に仕立て兵に対抗させようとした。