腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

和合曽太郎とその妻加津子が、不慮の交通事故死を遂げた。その訃報を聞いて、姉の澄伽が東京から帰ってきた。和合家は、後妻の加津子と連れ子の長男・宍道、その妻の待子、次女の清深が居た。傲慢に振る舞う澄伽は、妹の清深に特に容赦しない。清深も宍道もそんな澄伽を受け入れている。待子だけは、そのことを不思議に思っていた。4年前の事。澄伽は女優を目指すために上京したいという。それに反対され、激しい口論の末に父親の曽太郎をナイフで切りつようとする。そして、止めに入った兄の額に消えない傷を作ってしまった。それでも諦めない澄伽は、上京資金を作るために、クラスメートたちを相手に売春をするのだった。そんな姉を見ていた妹の清深は、創作意欲に掻きたてられ、姉の痴態の一部始終を漫画に描いて投稿する。ところが、その漫画は新人賞を受賞し、ホラー漫画雑誌に掲載されてしまった。村の人々に恥をあばかれ、澄伽は逃げるように上京するのだった。その後、澄伽は事務所に所属するが、電話で解雇通告されてしまう。彼女は、女優へのきっかけを掴むために、映画監督の小森に手紙を書き、思いがけず映画出演の話が舞い込む。