春が来れば
イ・ヒョヌは、トランペッターとして交響楽団のメンバーになる夢があったが、実現しないまま、気がつけば中年と呼ばれる年令になっていた。また、かつての恋人、ヨニは、新しい相手を見つけたらしい。「結婚するかもしれない」とヨニに告げられると、「幸せになれよ」と応えるが、本当はまだ二人とも相手に想いを残しているのだった。ある日、ヒョヌは、カンウォン道サムチョク市の中学校で音楽指導者を募集していることを知り、心機一転、その寂れた炭鉱の町に向かうのだった。トゲ中学の吹奏楽部は、かつては全国大会で入賞したこともあったが、町の人口が減るにつれて部員も減り、今度の全国吹奏楽コンクールで入賞しなければ、廃部になってしまう。トランペットを吹くのは、おばあさんと二人暮らしのジェイル。サックスのヨンソクは、ケニー・Gに憧れている少年。子供たちと心を通わせ、若い薬剤師スヨンとも打ち解けていく。食料などをどっさり抱えて母親が訪ねてくる。母親に若い頃の夢について尋ねると、女学生の頃は詩人か小説家か学校の先生になりたかった。結婚してからは幸せに暮らすのが夢だった。その次の夢は、おまえが立派になってくれること。「おまえが先生になって、母さんの夢がひとつ叶ったわ」という。ヒョヌは生徒たちを携えて、雨が降りしきる炭鉱場で、炭鉱労働者たちを讃える演奏をする。顔を真っ黒にした炭鉱労働者たちは、無言のまま楽団を取り巻き、じっと耳を傾けてくれる。ヨニの運転する車でギョンスがヒョヌに会いに来るが、ヨニはそのまま走り去る。近くの海岸を歩いていたヨニは、ひとり海を見つめて泣いているジェイルに声をかける。ジェイルは、ヒョヌが作った曲を吹く。よく知っているヒョヌのメロディにそっと泣き出すヨニ。彼女は結婚をとりやめにしたが、ヒョヌにそれを告げるつもりはなかった。大会の日、みんなが力を出しきる。入賞は果たさなくても、海岸で遊ぶ少年たちとヒョヌの笑顔はキラキラ輝いていた。
- 公開日
- 2006年3月25日(土)
- 監督
- リュ・ジャンハ
- 脚本
- リュ・ジャンハ
- 撮影
- イ・モゲ
- 音楽
- チョ・ソンウ
- 製作年
- 2004
- 製作国
- 韓国
- 原題
- When Spring Comes/Springtime
- 上映時間
- 128
- INTRODUCTION
- ヒョヌは、交響楽団でトランペッターになる夢があったが、それを果たせぬまま、気がつくと中年になっていた。だが、田舎の中学校で吹奏楽部の指導をするうちに、人の心の温かさに触れ、ゆっくりと自分自身も成長していくのであった。ここには、雪深い冬の時代を経て、やがて春を迎える炭鉱町ののどかな風景の中で、季節の移り変わりとともに生まれ変わっていく中年男性の姿が心優しく描かれている。ヒョヌを演じるのは、名優チェ・ミンシク。『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』『クライング・フィスト』と、ヒットを飛ばし、アクションや暴力シーンがある作品が続く中で、本作はしみじみと感動させられる名作である。また、元恋人を演じるのは、主に舞台女優として活躍するキム・ホジョン。『ほえる犬は噛まない』の不機嫌な妊婦役が印象深い。ヒョヌの母親を演じるのは、『浮気な家族』のユン・ヨジョン。そして、中学生ジェイルを演じるのは、韓国映画界きっての名子役、『大統領の理髪師』のイ・ジェウンである。監督は、本作が長編デビュー作になるリュ・ジャンハ。ホ・ジノ監督の『八月のクリスマス』『春の日は過ぎゆく』で助監督をつとめ、また『春の日は過ぎゆく』の脚本にも参加した実力派。ホ・ジノ監督からは演出法などで多大な影響を受けたというが、ホ監督にも大きな影響を与えてもいる。ホ監督は『春が来れば』を「大好きな作品」と称讃してやまないのである。
- STORY
- イ・ヒョヌは、トランペッターとして交響楽団のメンバーになる夢があったが、実現しないまま、気がつけば中年と呼ばれる年令になっていた。また、かつての恋人、ヨニは、新しい相手を見つけたらしい。「結婚するかもしれない」とヨニに告げられると、「幸せになれよ」と応えるが、本当はまだ二人とも相手に想いを残しているのだった。ある日、ヒョヌは、カンウォン道サムチョク市の中学校で音楽指導者を募集していることを知り、心機一転、その寂れた炭鉱の町に向かうのだった。トゲ中学の吹奏楽部は、かつては全国大会で入賞したこともあったが、町の人口が減るにつれて部員も減り、今度の全国吹奏楽コンクールで入賞しなければ、廃部になってしまう。トランペットを吹くのは、おばあさんと二人暮らしのジェイル。サックスのヨンソクは、ケニー・Gに憧れている少年。子供たちと心を通わせ、若い薬剤師スヨンとも打ち解けていく。食料などをどっさり抱えて母親が訪ねてくる。母親に若い頃の夢について尋ねると、女学生の頃は詩人か小説家か学校の先生になりたかった。結婚してからは幸せに暮らすのが夢だった。その次の夢は、おまえが立派になってくれること。「おまえが先生になって、母さんの夢がひとつ叶ったわ」という。ヒョヌは生徒たちを携えて、雨が降りしきる炭鉱場で、炭鉱労働者たちを讃える演奏をする。顔を真っ黒にした炭鉱労働者たちは、無言のまま楽団を取り巻き、じっと耳を傾けてくれる。ヨニの運転する車でギョンスがヒョヌに会いに来るが、ヨニはそのまま走り去る。近くの海岸を歩いていたヨニは、ひとり海を見つめて泣いているジェイルに声をかける。ジェイルは、ヒョヌが作った曲を吹く。よく知っているヒョヌのメロディにそっと泣き出すヨニ。彼女は結婚をとりやめにしたが、ヒョヌにそれを告げるつもりはなかった。大会の日、みんなが力を出しきる。入賞は果たさなくても、海岸で遊ぶ少年たちとヒョヌの笑顔はキラキラ輝いていた。
- CASTING
- チェ・ミンシク 1962年生まれ。89年「九老アリラン」で映画デビュー。92年『われらの歪んだ英雄』でアジア太平洋映画祭助演賞を受賞。主な出演作は「シュリ」「ハッピー・エンド」(99)、「ラブレター~パインラインより~」(01)、「酔画仙」(02)、「オールド・ボーイ」(03)、「親切なクムジャさん」(05年)など。 ●キム・ホジョン 1968年生まれ。99年「沈香」で映画デビュー。01年「バタフライ」でロカルノ国際映画祭最優秀主演女優賞を受賞。主な出演作は「ほえる犬は噛まない」(00)、「広島からの手紙」(02)、「女は男の未来だ」(04)など。 ●チャン・シニョン 1984年生まれ。ドラマで活躍後、オムニバス映画『ムッチマ・ファミリー』(02)で映画デビュー。本作が映画出演第2作目になる。 ●キム・ガンウ 1978年生まれ。02年「コースト・ガード」で映画デビュー。03年大ヒット作「シルミド/SILMIDO」に訓練兵の役で出演し、多くの観客に強い印象を残した。 ●ユン・ヨジュン 1947年生まれ。71年「火女」で青龍賞主演女優賞を獲得。主な出演作は「虫女」(72)、「死んでもいい経験」(88)、「浮気な家族」(03)、「その時、その人々」(05)など。 ●イ・ジェウン 1991年生まれ。02年「ロード・ムービー」で映画デビュー。「殺人の追憶」「ぼくらの落第先生」、「大統領の理髪師」に出演し、最も注目される子役となった。 ●チャン・ヒョンソン 1970年生まれ。主な出演作は、「シュリ」(99)、「実際状況」(00)、「バタフライ」(01)、「吹けよ春風」(03)、「羽」(05)などがある。
- 配給会社
- ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント