消えた小判屋敷

(C)KADOKAWA 1958
大阪の目明し・浪花屋三次と下っ引の兵六は京見物の途中、吹田村近くで“気違い”とはやされる男と行き合った。その男は京の両替屋大黒屋源兵衛といい世にも不思議な物語をきかせた。その話とは──彼は播磨の三日月藩に参勤交代の費用一万二千両の調達を頼まれ、藩の護衛役大村玄之進らと西へ向ったのだ。伜の清十郎はその礼に士分にとりたてられ、彼らにつき従った。途中、清十郎が寄り道し、吹田村の郷士黒田孫右衛門のもとで落ち合う約束になった。源兵衛一行は先着し、黒田や後妻お若、下男和助らに歓待を受けた。一万二千両は黒田の三つの倉に確かに入れられ、保管された。源兵衛は酔い、畳に煙草で焼きこげをつくり、庭では蛙の置き物をふみ割った。

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