2/2(にぶんのに)
中島みゆきの同名小説の映画化作品。
彼女自身による音楽と芝居を独自のスタイルでミックスした音楽劇「夜会」で発表されたのが初出で、その後小説化されたもの。中島みゆきの精神世界を表現した、きわめてシュールな作品といえるだろう。2/2(にぶんのに)は数学的にいえば、つまり1のことだけれど、それを単純に1と言い切ってしまっては作者の意図とまったく外れてしまう。人間は、その内部にもう一人の自分を常に内臓しており、表面に現れている自分は全体の半分、つまり1/2でしかない。その1/2と1/2が合わさって、はじめて自分という一個の人格が形成される、と中島みゆきは考える。それでは、その表面からは見えない1/2とはいったいなんだろう?それを捜し求めるのが、すなわち生きるということ。人生とはもう一人の自分探しの旅にほかならない。この考え、あるいはレトリックこそ、中島みゆきのスタイルそのものなのだろう。この映画でも瀬戸朝香のヒロインが、異国のベトナムをさすらう姿の中に、単なる彷徨とは違う精神性が秘められていそうだ。と、ここまで突っ込んで考えなくても、この作品はラブ・ストーリーとしての完成度も高く、中島のファンであるなしに関係なく楽しめる。もちろん彼女のファンなら、さらに深く楽しめるだろう。