エレニの旅

革命の勃発と赤軍のオデッサ入城で、命からがら逃げてきた逆難民のギリシャ人たち。彼らは今、ギリシャのテサロニキ湾岸の荒れた草野に、東をめざして歩きつづけている。スピロスが、一行の長で、病弱な妻ダナエ、5才の息子アレクシス、そして、オデッサで両親を失ない孤児となった幼い少女エレニがいた。その10年後、スピロスたちが築いた<ニューオデッサ>の村には、家々が建ち並び、学校も教会も出来た。その村に、一艘の小舟で少女エレニが戻ってくる。エレニはスピロスの息子アレクシスの子供を産み、生まれた双児は裕福な商人夫妻の養子にしてもらった。スピロスにはその事を秘密にしていたのだ。スピロスに知られればエレニは殺されるだろう。その夜、スピロスが弟たちとオデッサの日々を偲んで歌う間、アレクシスは庭の闇のなかでエレニに言う。「いつかふたりで、河のはじまりを探しに行こう」。数年後、妻ダナエがなくなり、スピロスは成長したエレニを娶ろうとする。姉カッサンドラや弟たちの反対を押してスピロスは結婚式を強行したが、エレニは花嫁姿のまま逃げ出して、アレクシスとふたりで村を後にするのだった。
公開日
2005年4月29日(金)
監督
テオ・アンゲロプロス
脚本
テオ・アンゲロプロス トニーノ・グエッラ ペトロス・マルカリス ジョルジオ・シルヴァーニ
撮影
アンドレアス・シナノス
音楽
エレニ・カラインドロウ
出演
アレクサンドラ・アイディニ ニコス・プルサディニス ヴァシリス・コロヴォス エヴァ・コタマニドゥ
製作年
2004
製作国
ギリシャ=仏=伊=独
原題
TRILOGIA I: TO LIVADI POU DAKRYZEI
上映時間
170
INTRODUCTION
テオ・アンゲロプロス監督の6年ぶりの長編作で12作目。構想に2年、撮影に2年をかけ、ついに新たな傑作が誕生した。物語は1919年から1949年のロシア革命で、赤軍がオデッサに入城してオデッサから追われ、逆難民となって帰国する一群のギリシャ人たちを描いている。当初の企画では1本の長編で20世紀全体を描く構想だったという。膨大な時間となることから、3本の映画としてそれぞれが独立した構成で製作することになり、その第1作が「エレニの旅」となった。第2作は1949年から1972年、第3作は20世紀末のニューヨークに至る構想である。「エレニの旅」の撮影は2001年秋に開始した。最後の撮影は2003年。そして2004年のベルリン映画祭で<ザ・ウイーピング・メドウ>として発表した。撮影は「こうのとり、たちずさんで」のアンドレアス・シナノス、美術は「旅芸人の記録」のパッツァスと「永遠と一日」のディミトリアディスのコンビだ。製作はアンゲロプロス夫人であるフィービー・エコノモプロス。音楽は「シテール島への船出」から全作品を担当しているエレニ・カラインドルー。ヒロインのエレニは、アンゲロプロスが母カテリナへのオマージュとして造型した人物で、古代ギリシャ劇の悲劇のヒロインと現代性とをあわせもつ新人女優アレクサンドラ・アイディニ。アレクシス(アレクサンドロスの愛称)には若手演劇俳優のニコス・プルサニディス。父親スピロスは「霧の中の風景」のヴァシリス・コロヴォス。ニコス役には、ヨルゴス・アルメニス。また、アンゲロプロスの長編第1作『再現』でヒロインのエレニ役を演じたトゥーラ・スタトプロウが、幻覚に襲われるエレニを介抱する老婆役で登場している。
STORY
革命の勃発と赤軍のオデッサ入城で、命からがら逃げてきた逆難民のギリシャ人たち。彼らは今、ギリシャのテサロニキ湾岸の荒れた草野に、東をめざして歩きつづけている。スピロスが、一行の長で、病弱な妻ダナエ、5才の息子アレクシス、そして、オデッサで両親を失ない孤児となった幼い少女エレニがいた。その10年後、スピロスたちが築いた<ニューオデッサ>の村には、家々が建ち並び、学校も教会も出来た。その村に、一艘の小舟で少女エレニが戻ってくる。エレニはスピロスの息子アレクシスの子供を産み、生まれた双児は裕福な商人夫妻の養子にしてもらった。スピロスにはその事を秘密にしていたのだ。スピロスに知られればエレニは殺されるだろう。その夜、スピロスが弟たちとオデッサの日々を偲んで歌う間、アレクシスは庭の闇のなかでエレニに言う。「いつかふたりで、河のはじまりを探しに行こう」。数年後、妻ダナエがなくなり、スピロスは成長したエレニを娶ろうとする。姉カッサンドラや弟たちの反対を押してスピロスは結婚式を強行したが、エレニは花嫁姿のまま逃げ出して、アレクシスとふたりで村を後にするのだった。
CASTING
●アレクサンドラ・アイディニ(エレニ) 1980年生まれ。ローマ出身。「ニュー・グリーク・シアター」を拠点に舞台で活躍中。D・カタリフォスとG・ダリアニスの”ワークショップ”のセミナーや、国立劇場主催のサマー・シアター・アカデミーにも参加するなど、舞台で意欲的に活躍する新進女優である。長編映画は本作で初主演となる。 ●ニコス・プルサニディス(アレクシス) 1982年生まれ。アテネ出身。ギリシャ国立劇場に在籍の頃から、ヨルゴス・アルメニスの<ニュー・グリーク・シアター>で演技を学んだ。ギリシャ語、英語、イタリア語を話す。10代の頃からアイドル・スターとして人気を集めている。 ●ヨルゴス・アルメニス(ニコス) 「ニュー・グリーク・シアター」で俳優・演出家・芸術監督・座付作者として活躍する演劇人。67年にギリシャ芸術劇場に入り、カロロス・クーンの薫陶のもとで20年以上にわたって古典劇から現代劇まで数々の役をこなして活躍した。アンゲロプロス映画には初めての出演。パンテリウス・ヴルガリスの『It's a Long Road』でテサロニキ映画祭の主演男優賞を受賞している。 ●ヴァシリス・コロヴォス(スピロス) 70年代にアテネでシェークスピアやギリシャ古典劇で活躍をはじめ、映画にも数多く出演するいっぽう、作家としても才能を発揮し、95年に出版された小説《Remember Father》は10版を重ね、シドニー大学の現代ギリシャ文学カリキュラムにも含まれている。詩の論文もあり、バイロン芸術祭のディレクターをつとめ、ギリシャ俳優協会の会長でもある。

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