紀雄の部屋

紀雄は、大学生で薬学部4年。プロレスラー、フゴフゴ夢路(富豪2夢路)に憧れ、常に「男らしく、逞しくあれ」ということを信条としている。きれいに整頓された彼の部屋は、ラッピングされたプロレスグッズに囲まれているのだ。そんな紀雄に、最近恋人が出来た。綾子である。彼女をプロレス会場で見かけて、一目惚れしてしまった紀雄は、その後、同じ大学の学生だと知って、彼女に気持ちを伝えたのだ。汚いくつ下のまま、部屋に上がり込み、ベッドの上で食べ物を頬張る綾子。そんな綾子へ向ける紀雄の気持ちは、彼女が今まで、どんな男と関係したのかを考えると気が狂ってしまいそうになるのだ。几帳面で小心者の紀雄は、「女に負けてはダメ！」という先輩のアドバイスを信じ、綾子の前では“男らしく”振舞っている。そんなある日、ひそかに紀雄に想いを寄せる美土里がやって来る。彼女は、綾子のことをいろいろ調べたらしく、綾子をよく知るという昔の同級生・中村を連れてきたのだ。中村の口から、綾子の本当の素顔を聞いた。紀雄は、彼女が自分に“ある嘘”をついていたことを知る。よく考えたら、「僕はほとんど彼女のことを知らないんじゃないだろうか？」「彼女の本当の姿が知りたい」。紀雄は、綾子の嘘について問いつめた。すると、綾子は、その日以来、紀雄の前から姿を消してしまった。そして、綾子を探すための紀雄の小さな旅がはじまった。