ヴァイブレータ

公開日
2003年12月6日(土)
監督
廣木隆一
脚本
荒井晴彦 赤坂真理
撮影
鈴木一博
音楽
石川光
出演
寺島しのぶ 大森南朋 田口トモロヲ 戸田昌宏 高柳絵理子 牧瀬里穂 坂上みき 村上淳 野村祐人
製作年
2003
製作国
日本
原題
VIBRATOR
上映時間
95
INTRODUCTION
原作は赤坂真理の同名小説。芥川賞候補にもなった。独自の文体で主人公・早川玲の心の動きを描いた物語に、現代女性の多くは共感。頭のなかで聞こえる様々な”声”のせいで不眠、過食、食べ吐きを繰り返す主人公は現代社会に生きる女性のひとつの典型だ。31歳の早川玲を演じるのは寺島しのぶ。舞台での活躍が評価される正統派女優であるが、今までのイメージからはかけ離れた役どころで主人公の玲を繊細かつ大胆な演技で熱演している。玲が好きになるトラッカーの岡部希寿役には、『Quartetカルテット』、『OUT』の大森南朋。出演作ごとに印象の変わる彼が、本作でも今までとは違う役に挑戦。どこにでもいるようでいない普通のトラック運転手を自然体で演じている。脚本は荒井晴彦。原作に忠実で、女性特有の赤坂真理の世界を、より客観的なまなざしで映画の世界に織り込んでいる。監督は『東京ゴミ女』、『美脚迷路』、『理髪店主のかなしみ』など、日常生活の隙間を独自の映像センスで切り取る廣木隆一。玲の本当の”声”を字幕で挿入し、余分な装飾や説明なしに、あくまで玲と岡部の心の動きに寄り添った演出が素晴らしい。
STORY
フリーのルポライターをしている早川玲、31歳。彼女は、いっからか頭の中で”声”が聞こえるようになった。その声に悩まされているのだ。誰かの言葉や雑誌の文章、言えなかった自分の気持ちが”声”として彼女のなかでざわめき、そのせいで不眠、過食、食べ吐きを繰り返す玲はアルコールに依存していた。彼女は、雪の夜コンビニへ酒を買いに行った。白ワインとジンを探していると、一人の男がコンビニに入ってきた。それを見て、彼女の中の声が「いい感じ」「あれ、食べたい」と言う。玲の視線に気付いた男はすれ違いざまに、彼女の体に触れた。玲はコンビニを出て行く男の後を追う。男はトラックの運転席に座り、玲はトラックに乗り込む。男は岡部希寿というフリーの長距離トラック運転手だった。やがてアイドリングの振動を感じながら二人は肌を重ねるのだった。夜明けになり、男は「道連れにして」という玲を乗せ、京から新潟へ向けて走り出した。岡部には妻と子供がいること、長い間ストーカーの女につきまとわれていること、中学もろくに出ていないこと、工務店で働いた後、ホテトルのマネージャーをしていたこと、それからトラックの運転手を始めたこと、これが二台目のトラックだということを男は話した。玲も自分の職業や、取材で会った女性から聞いた食べ吐きを自分でもするようになったこと、アルコールに依存していることを話す。残雪の白い景色が続く中、男が無線のスイッチを入れ、他のトラッカーたちと交信を始めた。突然、それまで聞こえなかった”声”が一気に彼女を襲う。玲は泣きながら「気持ち悪い。吐く」と苦しそうに訴える。岡部は玲をラブホテルに連れて行き、風呂を用意する。優しく玲の体にお湯をかけ、湯船に入れる。「この男が優しいのは感情じゃなくて本能だよ」。また”声”が聞こえる。翌朝、岡部が玲にトラックを運転させ、岡部のいうとおりにハンドルを切り、彼女の運転でトラックが走る。玲の顔に笑顔が戻ったが、旅の終わりが近づいていることを二人は知っていた。
CASTING
●寺島しのぶ 1972年、京都府生まれ。父は歌舞伎俳優の七代目尾上菊五郎、母は女優の富司純子。本格的な女優デビューは89年のNHKドラマ「詩城のたびびと」。翌年、文学座研究生となり、93年の「恋と仮面カーニバル」で初舞台を踏む。「近松心中物語」、「華岡青洲の妻」などの舞台での演技が高く評価され、芸術祭新人賞、第4回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。03年「さぶ」「マッチ売りの少女」で第37回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。映画では荒戸源次郎監督の『赤目四十八瀧心中未遂』(03年)でヒロインという大役を演じる。『ヴァイブレータ』で映画初主演を果たす。 ●大森南朋 1972年、東京都生まれ。96年、市川準演出のサントリーのCM出演をきっかけに役者として活動を始める。以後、『Quartet カルテット』(01年/久石譲)、『殺し屋1』(01年/三池崇史)、『OUT』(02年/平山秀幸)など、数多くの個性派監督の作品に出演。的確な演技で、多くの監督から絶大な信頼を集めている。役者のみならず、役者が監督をキャスティングするショート・フィルム・オムニバス「刑事まつり一発逆転」の『リハビリ刑事』では初めて監督に挑戦。今作より先に公開される『赤目四十八瀧心中未遂』では寺島しのぶと共演。短い出番ながら、その怪演ぶりでインパクトを残している。『サル』(03年/葉山陽一郎)、『のんきな姉さん』(03年/七里佳)、『アイデン&ティティ』(03年/田口トモロヲ)など、公開待機中の出演作が目白押し。
映倫
20
配給会社
シネカノン

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