アララトの聖母

(C)2002 Miramax Films
著名なアルメニア人の映画作家、エドワード・サロヤンは、1915年、聖なる山アララトの麓で起きたアルメニア人虐殺の史実を、当時のアメリカ人宣教師クラレンス・アッシャーの著作に基づいて映画化する企画を考えていた。脚本家のルーベンと作品の構想を固めていくなかで、サロヤンはひとりの画家の存在に注目した。虐殺で母を亡くしたあと、アメリカに移住し、「芸術家と母親」を描いた抽象表現主義の画家アーシル・ゴーキーだ。そこで、ゴーキーの研究家として知られる美術史家のアニに、撮影の顧問を依頼する。未亡人のアニには二度の結婚歴があった。最初の夫は、アルメニアの自由を求める戦いのなかでトルコ大使の暗殺を企てて警官に射殺された人物。「彼は英雄として死んだ」と信じるアニだったが、18歳の息子ラフィは、父がテロリストなのか英雄なのかという疑問にさいなまれ、それがアニとの間に溝を作る原因になっている。さらに、二番目の夫の娘シリアの存在が、母子の問題をますます複雑にしていた。ラフィは、サロヤンの現場で雑用係として働いていた。映画の中で非道に振舞うアリの演技に憎しみをかきたてられた彼は、父が何のために生き、何のために死んでいったかを確かめるために、アララトへ旅立とうと決意する。

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