ムーンライト･マイル

ジョーは、婚約者のダイアナと結婚して、彼女の父ベン･フロスの不動産業を手伝うはずだった。しかし、結婚式を間近に控えたダイアナは、街角のコーヒーショップで起こった発砲事件の流れ弾に当たり、帰らぬ人となってしまった。ひとり取り残されてしまうジョー。そんな彼を温かい気持ちで見守り支えてくれたのは、新しい親子関係に希望を見出そうとするベンと、妻ジョージョー。ベンは、今は行動することでしか悲しみを紛らわす術を知らない。彼は会社の看板を「フロス＆サンズ」に書き換え、隣町の不動産大会にジョーを連れて参加する。そこで出会った大物不動産王のマルケイヒーから、ケープ･アンに大型商業施設を建設する計画があると聞かされる。彼は大はりきりで地上げの仕事に取りかかる。 地上げの対象となった商店街には、「キャルの店」という酒場が含まれていた。経営者のキャルは、ベトナム戦争で３年間行方不明になっており、店はキャルの恋人で昼間は郵便局に勤めるバーティーが切り盛りしていた。郵便局へ結婚式の招待状の発送を止めに行ったとき、バーティーと顔見知りになっていたジョーは、キャルの店の地上げ交渉は自分が引き受けると宣言する。俄然やる気を見せはじめた彼の態度にベンは大喜び。しかし、ジョーの思いは別のところにあった。「悲劇の花婿」として扱わないバーティーの思いやりに安らぎを見出し、後ろめたさを感じながらも彼女に惹かれていたのだ。