春の惑い
1946年。中国・蘇州。ユイウェンは、由緒ある旧家ダイ家に嫁いだが、抗日戦争に巻き込まれ旧家は没落。今は年老いた使用人ホワン、気難しい夫リーイェンとその妹の4人で、平穏だが変化のない日々を送っていた。そんなある日、かつて上海で共に医学を志していた夫の旧友が、夫を訪ねてきたのだ。ユイウェンは久々の来客の姿を見て驚く。それは16歳のときの初恋の相手、チーチェンだった。二人の関係を知らないリーイェンは、純粋に旧友との再会を喜ぶ。やがてユイウェンは、チーチェンが抗日戦争に参加するために自分の前から姿を消したこと、今は上海で医者になっていることを知る。その夜、ユイウェンは長い回廊を渡り、チーチェンの部屋を訪ねた。終戦直後の蘇州では、深夜、停電になる。揺らめく蝋燭の灯りだけを頼りに、かつての恋人同士が顔をあわせる。翌朝、チーチェンは憔悴したリーイェンを診察する。志半ばで旧家に戻り、ユイウェンと結婚したリーイェンは、鬱病にかかっていたのだ。チーチェンは家にこもりがちのリーイェンたちを、舟遊びに誘い出す。春浅い川の水面を滑る船の上で、ユイウェンは久々に幸せを感じていた。そして、この後、濃密な感情のドラマが展開していく。