わが町
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明治の末、フィリピンのベンゲット道路開拓現場で働いていた、血気盛んな一本気の若者“ベンゲットのたぁやん”こと佐度島他吉が、生れ故郷の大阪天王寺の裏長屋に、人力車と風呂敷包み一つで戻って来た。出航前夜、情を交したお鶴が、四つになる初枝を抱え苦労していると聞いた他吉は、お鶴に代って夜店を手伝うことに。やがてお鶴は急病で倒れ息を引取る。二十年後、梶捧一筋に他吉の丹精の甲斐あり、初枝も立派に成長し若者新太郎と結婚。だが、新婚早々新居が出火し焼け出され、他吉の許に転り込んでから腰抜け同然の新太郎をフィリピンへ出稼ぎに行かせる。身重な初枝を庇い稼ぎまくる他吉の処に、ある日新太郎客死の報。初枝、はそのショックで父を恨みつつ死ぬ。遺児君枝を片手に他吉は、梶棒を握り続ける。めぐる因果に当惑するものの、君枝を育てる喜びに気持ちを直した他吉の働きは近所の人を驚かすほどだった。