仏師
自然豊かな飛騨の集落に移住してきた若い夫婦、仏師の直哉とその妻・陽真理。新たな土地で慎ましい生活を始める二人だが、直哉はなぜか本業である仏像が彫れずにいた。一方の陽真理にも胸に秘めたわだかまりがあり、その仲はどこかぎこちない。初めは用心深く様子を伺っていた集落の住人も、夫婦が隣人の吾郎やその孫娘・希々夏(ののか)と仲を深めるにつれ、少しずつ二人を受け入れるようになる。だが直哉は、集落のお堂にある焼けた観音像を巡って、吾郎と集落の住人の間にも不穏な空気が流れていることを知る。少しずつ明らかになる、人々が抱えた罪や後悔の思い。そして焼けた観音像にまつわる悲しい記憶。やがて希々夏を巡り、同じ過ちが起ころうとしていた̶̶。