何もない栃木の田舎町で、くすぶり続ける映画監督の渡辺紘文。地元・栃木を拠点に映画製作団体「大田原愚豚舎」を旗揚げし、東京国際映画祭で数々の受賞歴を持つ渡辺は、自他ともに認める“世界の渡辺”である。しかし“世界の渡辺”もいまは脚本も書けず、大手映画会社から依頼がくることもなく、地元の仲間たちと悪態をつきながら日々を過ごしている。
ある日、旧知のプロデューサーから、世界的映画監督”KOREEDA”の代打で沖縄での映画制作の話が舞い込む。久々の映画制作に浮足立つ渡辺が沖縄に向かうと、「いますぐ俺を主人公にして映画を作れ」と“社長”に高級ホテルに缶詰めにされる。「世界的映画監督ならできるだろう」と無茶苦茶な要求をされ、1週間で書き上げるはずの脚本は1ページも書き進まないまま時が過ぎていく。結局、“社長”にも見限られ、ホテルを追い出された渡辺はひとり映画館へ足を運ぶ。
「すみません。映画監督の渡辺紘文という者なんですが、自分の映画を上映してもらえる劇場を探しています。」
沖縄・首里劇場、大分・ブルーバード、福岡・小倉昭和館、鳥取・ジグシアター…。コロナ禍にひとりミニシアターを訪ね歩く渡辺は、その道中でいつも正体の異なる不思議な少女に出会い、導かれていく。ようやく兵庫・豊岡劇場で上映が決まるも、誰も“世界の渡辺”を知らず、チケットはまったく売れない。
雪が舞い落ちる北海道・サツゲキを経て、遂に日本最北端の映画館・大黒座に行きついた渡辺。再び自分の映画を上映することができるのか、“世界の渡辺”として返り咲くことができるのか!?
そして“世界の渡辺”は、映画を愛する人たちと出会い、何を見つけるのか――。
■公式サイト
あなたの微笑み
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2022年11月12日(土)公開