うたた寝している中古車屋の娘は、もうすぐ30 歳になろうというのに、家でゴロゴロ、昼過ぎに起きて、中古車屋の裏の喫煙所に何年も吊られっ放しの、雨ざらしのハンモックにぼよんと寝転がり、起きるでも眠るでもなく、生い茂る木々の葉っぱを眺めているように見えて、実は今後の人生について思いを巡らしながら、ふと頬を風に撫でられた途端に宇宙のことを考え出し、夏の空に伸び広がる天気輪の柱を見た気がしたのだが、やがてそんなこともどうでもよくなって、いつの間にかうたた寝をはじめ、今日もまた陽が暮れていく。
……というようなストーリーはこの映画にはありません。物語らしいことは何も起きない。ただただ女の子が寝ているだけの映画です。にもかかわらず、確かに何かが起きている。どうしてこんなものが撮れてしまったのか、それは分かりません。「見つめる」行為の向こうに立ち現れる“何か”。それを見つけに、ぜひお越しください。
■公式サイト
すずしい木陰
2020年6月1日(月)公開