山中静夫氏の尊厳死
2019年9月21日(土)公開
「私は肺癌なのです」初診の場で、自分が癌であると口にした患者に出会うのは、医師の今井にとって初めての経験だった。患者の名前は、山中静夫。自宅がある静岡の総合病院からの紹介で、今井のいる信州の総合病院にやって来たのだ。紹介されてきた資料によれば山中さんは、腰の骨と肝臓に転移のある腺癌というタイプの肺癌で、明らかに末期の状態だった。予後は一ヶ月から三ヶ月の間と思われた。付き添う家族の負担を考え、今井は山中さんに今まで通り静岡の病院での再治療をすすめたのだが…。