棘の中にある奇跡~笠間の栗の木下家~
渋谷有香は売れない女優。数年前に茨城県のケーブルテレビのレポーターの仕事で笠間市を紹介してから、毎年秋になると笠間の栗の収穫のアルバイトにやって来ている。いつもお世話になっている木下家。しかし今年は例年と違っていた。木下家のおじいちゃんが春に亡くなって、おばあちゃんの木下初恵が一人で有香を出迎えた。さらに謎の男、三島大樹が現れ、奇妙な三人の同居生活が始まるのだった。「栗だって、実のまわりにたくさんイガがあるだろ?」「本当の自分って一番奥にあるもんなんだ。誰かが触ろうとすると痛いもんだ。だから、その男が尖れば尖るほど、よっぽど大切にしてるんだって事だ」栗の収穫をしながら、徐々に寄り添っていく三人の心。だが、初恵に起こる奇妙な出来事は、次第に有香と大樹の運命を変えていく―。