『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を生み出した米国A24と、『パラサイト 半地下の家族』を配給した韓国CJ ENMが初の共同製作で贈る注目作、『パスト ライブス/再会』が4月5日(金)より公開される。本作は、ソウルで初恋に落ちた幼なじみのふたりが、24年後の36歳、NYで再会する7日間を描くラブストーリー。メガホンを取るのは、本作で長編映画監督デビューを飾ったセリーヌ・ソン。5部門にノミネートされたゴールデン・グローブ賞では、外国語映画賞や作品賞(ドラマ部門)のほか主演のグレタ・リーを女優部門(ドラマ)に押し上げただけでなく、監督賞と脚本賞にはセリーヌ・ソンの名前が踊った。『バービー』のグレタ・ガーウィグや『哀れなるものたち』のヨルゴス・ランティモス、『オッペンハイマー』のクリストファー・ノーラン、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』のマーティン・スコセッシなど、映画界を代表するような名匠たちの名前が呼ばれる中、彗星の如く現れたフレッシュな才能だ。
北米でのアジア系映画に注目が集まったのは2018年8月、シンガポールを舞台にしたシンデレラストーリー、『クレイジー・リッチ!』が公開初週ボックスオフィス1位を獲得、大ヒットを記録したことが大きな転機となる。主要キャストをアジア系俳優で固めたハリウッドメジャースタジオによるアメリカ映画としては、1993年の『ジョイ・ラック・クラブ』以来初であり、まごうことなきブロックバスターとなった。これ以降、賞レースでもアジア映画の存在が際立つようになる。2020年、世間の話題をさらい社会現象にもなったポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』がアカデミー賞4冠を達成し、2021年にはクロエ・ジャオ監督作『ノマドランド』が3冠、韓国の大物俳優ユン・ヨジョンが『ミナリ』で助演女優賞を受賞した。翌2022年は濱口竜介監督作『ドライブ・マイ・カー』が4部門ノミネート、見事外国語映画賞を手にし、日本映画では『おくりびと』以来の快挙となった。そして昨年、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』でミシェル・ヨーがアジア人初のアカデミー賞主演女優賞に輝き、アジア映画が同賞での重要なポジションの一角を担うようになった。映画の本場であるハリウッドでアジア系映画の時代が到来した今、「次なる主役」として世界に放たれるのがこの『パスト ライブス/再会』だ。
アジアにとどまらず、グローバルな思考を持ち、ボーダレスな活躍をしているキャスト・スタッフが勢揃いしている点も本作の魅力である。監督のセリーヌ・ソンは、自身の体験談を映画化している通り、12歳の頃に家族とカナダに渡り今はアメリカ人の夫を持つ身だが、彼女が自身の人生を担わせたグレタ・リーは、韓国から移住した両親を持ち、生まれも育ちもロサンゼルスという生い立ちがある。劇中で初恋の相手にニューヨークまで会いに来るヘソンを演じたユ・テオはドイツで生まれ育ち、高校卒業後ニューヨークとロンドンで演劇を学んだ。その後、渡韓しドラマや映画で活躍している逆輸入俳優だ。グレタ演じるノラの夫を演じたジョン・マガロは、役柄と同じく韓国系アメリカ人であるファッションデザイナーの妻を持ち、繊細な感情と表情でアーサーというキャラクターにリアリティを持たせた。このように、演じた役柄と自身の人生の距離感がとても近いキャスト陣。彼らだからこそ表現することができた瞬間で満たされていることも、この映画の持つ「新しさ」だ。
映画のトレンドを作り出すハリウッド、そして映画賞の大本命とも言える米国アカデミー賞。巨匠・大作と肩を並べ作品賞・脚本賞にノミネートをされている本作は、世界を見据えて活躍してきたキャスト・スタッフによって美しい物語へと昇華された。『パストライブス/再会』が“世界の映画の最前線”となり、トレンドに新たな息吹を吹き込む日も近い。
4月5日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開