世界的大ヒット作『THE FIRST SLAM DUNK』を抑え韓国初登場No.1を記録した2024年必見の話題作『対外秘』。監督を務めたのは、韓国における観客動員数は330万を超えた話題作であり、『新感染 ファイナル・エクスプレス』で一躍トップスターとなった“マブリー”ことマ・ドンソク主演のバイオレンス・アクション『悪人伝』を手掛けたイ・ウォンテ。ユニークなキャラクター作りを強みとし、韓国映画界で“名ストーリーテラー”として知られるイ・ウォンテ監督が、最新作の〈対外秘〉な撮影の裏側を明かしてくれた。
舞台は90年代の釜山。荒々しく粗雑な街で、国と国民に尽くそうとした政治家が、悪の権力者によって切り捨てられる。リベンジに燃える男は、国家を揺るがす〈極秘文書〉を手に入れ、自らもダークサイドに堕ちる覚悟で、巨悪への反撃に出る!
『悪人伝』同様、政治家×ヤクザ×権力者という個性的でアブノーマルなキャラクターたちの闘争を描いた本作。韓国の名優たちが集結し、世紀の下剋上バトルを彩った。主人公ヘウン役には、『最後まで行く』、『お嬢さん』などで主要キャストを務めたチョジヌンを起用。「彼は、一瞬にしてヘウンの感情を変えることができる」とイ・ウォンテ監督もお墨付きのベテラン俳優だ。釜山の権力者でヘウンと対立するスンテを演じたイ・ソンミンに至っては、イ・ウォンテ監督が「スンテというキャラクターで一番大事なステップは、イ・ソンミンをキャスティングしたことでした。最初は穏やかなオーラを放っているんですが、凄みのある目と声で、キャラクターを完成させてくれました」と語るほどの実力者だ。そんな2人の名優と共闘するのが、ヘウンに手を貸す暴力的なギャング・ピルドを演じたキム・ムヨル。イ・ウォンテ監督『悪人伝』や『犯罪都市 PUNISHMENT』に出演しているキム・ムヨルについては、「入念に準備をする上に、カメラの前で自主的に素晴らしい演技をする俳優なので、状況に応じて最適な演技をしてくれました。誠実だし巧みな俳優です」と称賛したイ・ウォンテ監督。韓国映画が誇る3人のトップ俳優の演技対決に期待の集まるクライム・アクション作品だが、実はスクリーンの隅々まで計算されつくした繊細な演出も魅力のひとつだ。
「この映画では、権力には非常に醜くて汚い裏側があることを見せたいと思いました。そして、1992年当時の釜山の政治と権力の物語をこの3人のキャラクターが伝えることが重要でした」と語るイ・ウォンテ監督は特に、キャラクターたちのための舞台と空間づくりに力を注いだそう。例えば、多額の負債に苦しみながらも、国会議員になるという大きな野心を抱いている主人公ヘウン(チョ・ジヌン)。彼の住まいは、ヘウン自身の野望と現実との乖離を示している。釜山の海が一望できるヘウンのあばら家の前庭には、長い階段を上らなくてはたどり着くことができない。それが、辛さを経験すれば大きなことを成し遂げられる、という彼の考えを表しているのだと監督は言う。
また、「映画では、環境が単なる現実の再現を超えると、誠実さとパワーを感じさせる環境になります」と自らの流儀を語るイ・ウォンテ監督。照明や撮影にも、キャラクターの精神状態を正しく描出するための入念なこだわりが垣間見える。主人公ヘウンの照明はシンプルなものから始まり、徐々にコントラストが加えられることで、物語の進行とともに彼が悪に染まってゆくことがより顕著に映し出される。さらには、リアルすぎる90年代・釜山の再現にも注力し、各キャラクターのスタイルを尊重した衣装、小道具、音楽など、あらゆるディテールの細やかな演出が光る本作。細部に詰まったこだわりの数々は、ぜひ劇場の大画面で。
11月15日(金)シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷 他全国公開